数時間後ーー少年の言った通り、動けるようになった。歩くのにも問題はなそうだが、やはり反動が大きいせいだろうか。ふらふらと足元がおぼつかない。

それでも何とか泉にたどり着くことができた。やわらかい月灯りの差し込む泉はどこか幻想的で、神聖な場所のように思えた。

水面に映った自分の姿は血で汚れてしまっている。


……本当にいいのだろうか


『いいの。血の匂い嫌いじゃないけど?それともなに、血が好きなの?』


そんなはずはないだろうと思いつつ、躊躇いながらも臙脂色の上着を脱ぎ捨て、水の中でごしごし洗う。


ーー血が簡単に落ちる……


『それはここが魔力で満ちた世界だから。魔力が豊富だとね、色々できるんだよ。魔力はこの世界の住人の生活に根づいてて、多少なら大体の人は使える』



ーーそうなのか。便利なんだな。……?青い蝶……?

 

泉の上を青白く発光する蝶が舞っている。それはまるで舞踏会でダンスするように、優雅で美しい。