セロンはいま、初めて相手を見るかのように和則をみつめた。確かに、いまが初めてだった。そして、和則の顔に、いまは歯磨き粉でバカみたいに汚れているが、そのときの恩人の少年の顔を、重ねあわせた。確かに、命の恩人…和則だ。
セロンは驚愕に包まれたまま黙りこんだ。和則を見た。二十何年前に自分を救い、それから多分ずっと病院に閉じ込められていたであろう異常人の和則。いとけない幼児だったセロンを救い、慕われ、必要とされ、やがて忘れられた和則。
「俺……礼をいわなきゃな。ありがとう、和則」セロンはしんみりといった。
そして、負け犬や落伍者を軽蔑するのみで、哀れみなど感じたこともなかったセロンが、すべてを知って、和則への哀れみで身をひきさかれそうに思ったのだった。
「ありがとう……あんたは俺の命の恩人だ」と、やさしくいった。「ありがとう」
もう深夜だった。
和則はもうベットで眠りにおちている。セロンはなかなか眠れなかった。和則が命の恩人であり、今度は自分が彼を救わなければならない。そう思うと、どうしようもなく興奮した。そして、彼は傷ついてもいた。こんなに傷ついて疲れた気分は初めてだった。
確かに時間は遅い。でも、携帯を取りだし、ミッシェルの電話番号をプッシュした。
相手の呼び出し音がきこえ、セロンは心臓がどきどきするほどの思いでまった。
「もしもし?」
「やぁ、俺だよ」セロンは柔らかくいった。
返事はなし。
「切らずにいてくれたね。ということは婚約成立ってこと?」
ミッシェルは餌にはくらいつかなかった。「和則はどうしてる?」ようやくきいてきた。「和則のことなら想像つくだろ?気分は上々、異常もなしってね」
セロンは驚愕に包まれたまま黙りこんだ。和則を見た。二十何年前に自分を救い、それから多分ずっと病院に閉じ込められていたであろう異常人の和則。いとけない幼児だったセロンを救い、慕われ、必要とされ、やがて忘れられた和則。
「俺……礼をいわなきゃな。ありがとう、和則」セロンはしんみりといった。
そして、負け犬や落伍者を軽蔑するのみで、哀れみなど感じたこともなかったセロンが、すべてを知って、和則への哀れみで身をひきさかれそうに思ったのだった。
「ありがとう……あんたは俺の命の恩人だ」と、やさしくいった。「ありがとう」
もう深夜だった。
和則はもうベットで眠りにおちている。セロンはなかなか眠れなかった。和則が命の恩人であり、今度は自分が彼を救わなければならない。そう思うと、どうしようもなく興奮した。そして、彼は傷ついてもいた。こんなに傷ついて疲れた気分は初めてだった。
確かに時間は遅い。でも、携帯を取りだし、ミッシェルの電話番号をプッシュした。
相手の呼び出し音がきこえ、セロンは心臓がどきどきするほどの思いでまった。
「もしもし?」
「やぁ、俺だよ」セロンは柔らかくいった。
返事はなし。
「切らずにいてくれたね。ということは婚約成立ってこと?」
ミッシェルは餌にはくらいつかなかった。「和則はどうしてる?」ようやくきいてきた。「和則のことなら想像つくだろ?気分は上々、異常もなしってね」


