「……心配なら何かしたいって思うのが思いやりじゃないですか」



「私は恵子ちゃんに一か月前みたいに笑ってほしい。だから、なにかできないかな、て考えてるんですよ……」




黙ってタバコを吸いながら聞いていた店長は、やっと口からタバコを離し、白い息をおもいっきり加奈めがけて吹きかけた。



「ちょっ!!てんちょ……ゲホッ!!」


「おこちゃまね」


加奈はキッと睨んだ。きっと言い返したいのか、口を開いた瞬間、吸いこんだ煙のせいでゲホゲホいっている。


「したい、してあげたい。それはおこちゃまの考えでしかない。押しつけがましくて、思いやりなんて呼べたもんじゃないわ」


「そっ……、そんなこと……、ゲホゲホッ!!」



店長はせきこむ加奈を見て、タバコを近くの灰皿にすりつけた。

やっとせきがおさまった加奈は、涙目ながらも店長を見上げる。



「待つの」


「ま、待つ……?」


「そ、待ってあげるの」


店長は加奈から目線をそらし、どこか遠くを見ながら続けた。





「なにもしなくていい。時間が解決してくれる。だから待つのよ。私たちがしてあげられる最高のことはそれだけなのよ」