「加藤 唯。在り来たりな名前。」
シャワーから出てきた私に彼は煙草の
煙りを吐き出しながら
淡々とした口調でそう言う。
『携帯みたんですね、悪趣味』
こう言う世界では偽名を使う人も多いらしいが、私は使わない。
面倒なだけ。
ただ、余計な散策は嫌い。
ケータイにキーロックでもつけようか。
まぁ、この男とはもう会う事はないだろうけど。
「なぁ」
『はい』
「愛してやろうか」
ここにきて初めて彼が片方の口端を緩ませる。
意外だ。何ににも無頓着の様に見えた男だから私は彼を選んだのに。
ダルそうに男は私に催促をする。
妖艶な瞳に若干の欲を映しながら。
「なあ」
首筋に伸ばされた手はいやらしい手つきで
先ほど纏ったばかりの洋服を脱がしていった。