あいつは、あたしの姿に気付いたみたい。 自分の家を通り越し、あたしに向かって近づいてきた。 「なんだ、お前、こんな朝早くから」 「なんだって、これよ。 はい、ハッピーバレンタイン!」 あたしは笑って、チョコを差し出す。 「なんだよ、義理チョコはいらねぇって言っただろ」 忍の額には明らかに迷惑そうな皺が刻まれている。 「義理じゃないよ、本命」 「えっ?」 その時のあいつの、鳩が豆鉄砲食らったような、呆けた顔。 そんなに驚くことかな? それとも、ただこいつが鈍感なだけ?