天使の羽衣

夜に歩く山道というものは、昼間とはまた違った趣がある。

確かに危険ではあったが、その点は問題なかった。

当時大学生だった俺は、あの日、麻衣と一緒にここを訪れた。その記憶は2年経った今でも、俺の脳裏にしっかりと焼きついている。

険しい山道を順調に進むと、見慣れない場所に差し掛かった。

「ここは、確か――」

2年前、この場所はたしか土砂崩れで通ることができなかったはずだ。

あの日、俺と麻衣は、それでも諦めずに、道なき道を迂回して進んだのだ。

かつて苦労して登った道も、今やしっかりと整備されていて、俺は難なく通過することができた。