天使の羽衣

月明かりに照らされた清流を横切る橋の上で、俺の乗ったタクシーは停車した。

「お客さん、本当に行くんですか?」

運転手が心配そうに俺を見つめる。

「ええ、まぁ」

「やめたほうがいいですよ。さっきも言いましたけど、ここから先の道は細くて危険なんです。とても夜中に歩けるものでは…、手すりもないんですよ」

「心配いりませんよ」

「しかし…」

「ここには何度か来たことがあるんです」

嘘ではなかった。2年前、俺はここを訪れた。

この道の先には、大きな滝がある。