「タクシー、お呼びしますか?」

親切な車掌だ。

酒に酔って終点まで寝過ごす客が多いのだろう、と俺は想像した。

「いえ、ここで降りる予定だったんで…」

「そうですか」

乗降口から吹き込む風が冷たい。都内で一番標高の高いこの駅は、9月という季節を忘れさせる寒さだった。

ここから目的地までは数キロある。

歩いて行くのか…。

「あの…、」と、俺は車掌を振り返る。

「やっぱり、タクシー呼んでもらえますか?」