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「……さん!」

…………。

「お客さん!」

気がつくと、目の前に車掌らしき人が立っていた。

「…?」

「お客さん、終点ですよ」

どうやら俺はいつの間にか眠ってしまったらしい。

「あ、…はい」ふらふらと立ち上がる。

そこは小さな駅だった。

「お客さん、あの――」

寝ぼけ眼で歩き出す俺を車掌が呼び止めた。

「もしかして寝過ごしたんですか。残念ですけど、ここから市内へはタクシーじゃないと帰れませんね」

こういう客に対する対応もマニュアルにあるのだろうか。

俺は頭をさげ、作り笑いを浮かべた。

「お構いなく。大丈夫です」