天使の羽衣

「きっとどこかに謎の隠し扉があるんだよ」

と彼女は言う。

そんなものは、正直あるとは思えないが、もし本当に宝の地図があるとするなら、やはり彼女の言うように、隠し扉のようなものがあるのかもしれない。

なにしろここは屋上である。何かを隠せる場所なんて、ほとんどありはしない。

宝の地図は、相当あり得ないような場所に隠されているのだろう。

「噂が本当だとすれば、の話だけどな」

俺は自分の考えを述べた最後に、そう付け足した。

「健一くん、まだ信じてないの?」

「はいはい、信じますってば」

少女とそんな言い合いをしながら、俺は思った。

案外、楽しいかもしれない。

そういえば、彼女と話すのはそれほど苦痛と感じなかった。

ヒキコモリであるとバレて、吹っ切れた分を差し引いても、俺はどこか彼女との会話に居心地の良さを感じていた。