天使の羽衣

ひとまずこんな時は、そう、タバコに限る。

俺は、上着のポケットから取り出したセブンスターをくわえ、火をつけた。

一口吸って、再び思考をめぐらす。

少し冷静になった気がした。

そう、そうだよ。

たかが名前を知られただけではないか。
名前だけで俺が、社会の不適応者ヒキコモリくんだなんて誰が予想するだろう。

そうさ、簡単なことではないか。

俺はただ普通の人間のように振舞えばいいだけの話だ。

『そうそう、俺天文部なんだ。最近天文部に顔を出せないのは、学科のゼミがいそがしくてさぁ。ホント困っちゃうよね。それに俺、友達多くてさ、よくコンパに誘われるんだよ。バイトもあるし、これから先も、あまり天文部行けないかも~。』

とかなんとか、そんな感じのことを言えばいい。
ウソでもいいから言えばいいんだ。