天使の羽衣

「どうしたの?」

不振な目で俺を見る少女。

「お前、秘密ばっかりだな…」

そう返した俺は、かなり挙動不審に見えたに違いない。

「それはね、」少女は言う。
「キミだって何も教えてくれないからだよ」

そういえば、と俺は数分前までの記憶をたどる。

言われてみると、途中まで、俺の頭の中では色んな妄想が渦巻いていて、彼女の質問を完全にスルーしていた気がする。まったくひどい男だ。

要するになんだ。

俺たちはこの数分間、なんら内容のない会話をひたすら繰り広げていたことになる。
というか彼女の一人喋りに近い。