天使の羽衣

そして、この窮地から逃れる方法はただ一つ。

それすなわち、
一歩後退して扉をそっと閉めること。
そして俺は、冷や汗を拭いながら、自宅へ帰ればいい。

ただそれだけのことだ。

ただそれだけのこと―――

と、ドアノブに手をかけた瞬間、俺の危機脱却作戦は、見事に音を立てて崩れ去った。

「ねえ、キミ!」

と、その少女は、人の気も知らないで軽い口調で喋りかけてきた。

「ちょうどよかった!キミも手伝ってよ」

ああ―――

と、俺は天を仰いだ。お天道様が俺を嘲笑っていた。