天使の羽衣

この引きこもりの俺が、下界とは隔絶された屋上という特殊な空間に、他人と2人きり。

実に滑稽な話ではないか。

この特殊空間で、2人きりともなれば、一方から話しかけることは、もって然るべき流れではないだろうか。

いや、それはアニメの見すぎかもしれないが、とにかくだ。

少なくともこんなシチュエーションで、あいさつ然り、微笑み然り、一方から何かしらのコミュニケーション的な言動がないはずかない。

いまさら説明するまでもないが、ヒキコモリという人種が他者とのコミュニケーションスキル、特に対面における会話スキルが一般人より遥かに欠如していることは、周知の事実である。

しかもである。
俺が今対面している人間は、何をどう間違えたのか、「女性」なのだ。

いくら俺が、引きこもりを克服したいと願っているにせよ、初っぱなからこの試練はいくらなんでも無謀すぎる。

以上のことを踏まえると、この状況はつまり、
俺という人間の存亡を賭けた窮地に他ならなかった。