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午前の講義が終わったのか、外では学生たちの明るい声が響いていた。
そんな様子を俺は一人、屋上から眺める。
「……はぁ」
本日2度目のため息。
屋上に入れるのは、天文部である俺の特権である。
天文部。
入学当初、天文部に入部した俺は、きっと輝いていたに違いない。
宇宙や星という言葉に胸が高鳴り、大学で物理学を学ぶことにときめいていた自分はもういない。
星空は今でも好きだ。だが、物理学という学問は実際のところ単なる数字や文字の羅列で、俺は理想とのギャップに激しく打ちのめされた。
現実を知ったその日から、俺は天文部に行かなくなった。
