天使の羽衣

『天使の羽衣みたいだね』

それは2年前、麻衣が言った言葉だった。

あの日そう言って目を細める麻衣は、本物の羽衣を見てきた天使のようだった。

できることなら俺をあの日に――

熱いものが頬をつたう。

俺は涙を流していた。

滝に並んでそびえ立つ巨木が、涙に答えるように枝を揺らす。

周りの木々を圧倒して存在する、大きな大きなケヤキの樹。

「千年樹…」

俺たちは、この巨木にそう名前をつけた。

「千年樹、お前は覚えてるか…」

あの日の麻衣を。

小さく儚くてもろい、この地で散った俺の大切な人。

大学時代の俺たちは、どうしようもないくらい前向きで、野心に満ち溢れていた。

あの時もそうだった。

俺がもう少し冷静で、あんな馬鹿げたことをさせなければ――