何時まで、こんな悲しい蜜月を繰り返すのだろうか…。

僕、櫻木瑞希は近衛祐馬の策略によって、執事と言う名目で近衛家の屋敷にやって来た。

近衛は己の財力に物を言わせ、強引なやり方で僕をホテルのバトラーから執事へと。

ホテルのオーナーの弱みにつけ込み、有無を言わせず、この話を受けざる得なかった。
そんな近衛のやり方には、一抹の不安はあったが、僕は近衛にNOとは言えなかった。

近衛が欲しいのは、忠実な愛人だった。

こんなに人を憎いと思い…

そして心動かされたのは、近衛が初めてだった。

「瑞希」
不意に旦那様が、後ろから抱きしめてきた。


「旦那様、いけません…お離し下さい」

僕はその手から逃れる。
「私に逆らうのかな」近衛は更に抱きしめてくる。
違うのに…。

屋敷中とはいえ、他にメイドや従僕たちが行き交う場所なのに、こんな所で…抱きしめないでほしいかった。

僕は強い眼差しで、近衛を睨みつけるが、彼には何の効力も無い。

「瑞希無駄だよ、そんな可愛い顔をして睨んでも逆効果だよ。私を煽っているようにしか見えないよ」

「可愛い、瑞希」と近衛は耳元で甘く囁き、柔らかく耳を甘噛みしてきた。
「やぁぁっ…」僕は身体を震わせ…近衛に縋りついた。

「瑞希、感度が良くなったんじゃないか?」たったこれだけで腰にきたのかい。と意地悪く囁いてくる。

確かにその通りだ。近衛に出逢う前は、こんな快楽なんて…知らなかったのだから。

たったそれだけの行為に、僕は身も心も近衛を求めてしまう。

「瑞希…」

いけない、仕事中だと言うのにいつも僕は、甘い情事に流されてしまう、「僕は単なる執事に過ぎないのだから…」と言い聞かせる。


近衛に縋っていた身体をそっと離す。