圭が自分から何かに乗りたいと言うのは初めてだった。

今日はずっと、わたしのやりたい事に付き合っていた圭。

いきなりどうしたんだろ。




圭の目があまりにも真剣で、真っ直ぐで……。

わたしは疲れていたけど、圭の誘いを断れなかった。





「次のお客様、どうぞ」


かんじのいい係員が、わたしたちを手招きしている。

きっと、あの係員から見ればわたしたちはただのカップル。

先生と生徒なんて、思わないだろうな。

年がちょっと離れてるけど。





「ほら、乗ろう」
「うん」


変装をしているせい?

圭がいつも以上に優しいのは。

それとも、わたしの思い過ごし?





圭の茶色のウィッグは、夕日に溶け込んでいて。

わたしは夢でも見ているみたい。

……圭はかっこよすぎなんだよ。





「では、短い空の旅をお楽しみ下さい」


ガチャン……。


扉の鍵から鈍い音がした。

今のわたしには、そんなささいな音ですら緊張を呼ぶ。





だって、こんなに狭い空間に二人きりなんだもん。

さっきだって二人だったけど、なんでこんなに緊張するの…?





それはきっと圭が目の前に座ってるせい。

きっと、見た目がいつもと違うせい。