「………」
長崎先生の車内は、沈黙に包まれている真っ最中。
ん?
なんで、わたしが車の中にいるのかって??
実は……
―――10分前―――
『じゃあじゃあ、これからは先生の恋人ってことですよね?わたし!』
わたしはなかなか実感が掴めず、何度か同じ質問を先生にしていた。
その度に、先生は『そうだよ』と優しく答えてくれている。
やばい! 幸せ〜!!
『もう、帰るか?』
『えっ』
いきなりの先生の言葉は、わたしを現実に落とすものだった。
わたし的には、もう少し一緒にいたかった気分。
けど…。
先生を困らせるのはやだな。
しょうがないか。
『…はい、帰ります』
ちょっとうなだれながら呟くと。
『送ってく』
って……。
やっぱり優しいっ!
『じゃあ、お言葉に甘えて…』
………ということ。
わたしはいつもバスで通ってるから、家に着くにはまだ時間がかかりそう。
音楽でも流したいけど、先生の車は高級そうで、オーディオに触りにくい。
壊したら嫌だしね…。
…なんか、話すか。
「先生は、お金持ちなの?」
「?」
突然言い出したことの内容に驚いたのか、先生は目を丸くして視線だけこっちに向けた。
うーん…。
話ミスったかも。