ミッドナイト・スクール

「もしもし」
直ぐに冴子は通話ボタンを押す。
「……」
「もしもし、誰?」
携帯のディスプレイには相手の電話番号は表示されなかった。
「もしもし、誰なんだよ、今は非常事態なんだ。いたずらなら切るよ」
苛立たしげな声が体育館に響く。
やがて、脇で見守る信二たちの耳に、冴子の携帯のスピーカーからか細い女の声が聞こえた。
咄嗟に冴子は通話を切った。
「ああ、切るなよ! 誰からだったんだ?」
和哉の問いかけは冴子の耳には入っていなかった。
冴子は鋭い視線で携帯と足元を交互に見ている。

ピリリリリ、ピリリリリ、ピリリリリ。

再び呼び出し音が鳴る。
冴子の背中に鋭い悪寒が走る。普段何げなく聞いている呼び出し音が、おぞましい叫び声のように聞こえた。
「……も、もしもし」
先ほどとはうって変わって、おとなしい声で応答する冴子。
そして固唾を飲んで見守る信二たち。
「……わたし、わたしよ冴子!」
 スピーカーから聞こえてくる声に、目を見開いて固まる冴子。
「どうしたんだ冴子?」
「嘘でしょ、あんた……あんた一体……」
再び聞こえた声を聞いて、冴子はまた信じられないといった視線をスピーカーへと向ける。
「一体誰なんだ!」
 和哉の質問には相変わらず答えられない冴子。