ミッドナイト・スクール

「い、いたた。いたたた」
絡まった糸を解く様に、少しずつ少しずつ針金を解いてゆく。
魅奈の奇麗な手は、針金の先で何カ所も切れ、傷つき、指先から流れる赤い雫は、コンクリートに小さな斑点模様を作った。
「もう少し……出来た!」
ついにドアの戒めは放たれた。
これで悠子のいると思われる体育館の中へ入る事が出来る。
「信二君、早く」
信二はドアノブを掴むと引き開け、中の内戸を開けてフロアへ走り出た。
すぐに後からユリと魅奈が続く。
……体育館の中は真っ暗で、一瞬とはいえ床があるのかさえわからない。
徐々に目が慣れると、一つの明かりが見て取れる。ロウソクの火だ。
「ステージに何か……」
信二がそう言葉にした時。
パッ! 
……と、ステージの上がスポットライトの光で浮かび上がった。
そしてステージの光景を見て、三人は驚愕のあまり声すら出せなかった。
……そこには映画や、歴史の写真くらいでしか見た事のない断頭台があった。
揺れるロウソクの炎は、手前にあるロープを焦がしていて、断頭台にセットされている者の顔を照らし出している。
「な……ゆ、悠子!」
やっとの事で信二は声を絞り出した。
「いやあああ、悠子先輩」
後ろで魅奈が絶叫する。
「はあ、はあ、はあ、たす……けて……」
泣き疲れ、叫び疲れた悠子は、もはや大声を出す気力すらも無くしていた。身動きがとれないよう長時間縛られていたために、身体の感覚すらもない。
「信二ー、悠子は無事か?」
和哉たちが飛び込んで来た時には、信二はステージへと走り出していた。