ミッドナイト・スクール

「キャイン、キャイン」
「こら、往生際が悪いぞ。さっさとかかって来い!」
何度もバットでボコボコに叩かれ、和哉の相手のゾンビ犬には既に戦意はなかった。
「今まで散々ヒドイ目に遭わせてくれたんだ、この場で片付けてやる」
じりじりと歩み寄る和哉から、犬はついに逃げ出した。
「待て、こら!」
「キャン、キャン」
「そんなかわいい声を出してもだめだ」
逃げる犬は体育館前を通過して、裏門へ向かった。
犬を追いかける和哉は、途中で、体育館入り口の信二たちを見つけた。
「信二! 早くしろよ。こっちももうすぐ片付くからよ」
和哉は犬を裏門へ追い詰めた。
「へっへっへ、もう逃げられないぜワンチャン」
「クゥーン、クゥーン」
不意に和裁は、犬がさっきまでと怯え方が違う事に気が付いた。
「ん、どうした外ばかり見て……げっ!」
和哉は見た。裏門の外に無限の闇が広がっているのを……。
「キャイイイイン、キャイイイイン!」
やがて、闇の中から無数の手が伸びて来て、裏門を飛び出そうとしたゾンビ犬を捕まえた。
……その後、和哉が見たものは地獄のような光景だった。
殺された犬を見て恐怖を感じた和哉は、それと同時に、もはや学校内から脱出する事は不可能であると感じ取った。