「まずいわ、どうすればいいの?」
ユリと冴子はお互い背中を合わせ、脱出方法を考える。
「おらあっ!」
カキーン!
怪物の背中に和哉の打球が直撃した。
「グガアア!」
和哉の方に怪物が振り向いたその時!
「今だユリ! 走れ!」
冴子が叫び、ユリを怪物の右横に突き飛ばし、自分は怪物の左側へ飛び込む。
ユリが怪物の右側を通り抜けた瞬間だった。次いで冴子は左からすり抜ける。
「グガア」
怪物は右と左からの獲物に瞬時に反応できず、送れて出した腕は虚しく空を斬った。
「サンキュー和哉」
「よし、逃げるぞ」
全員は廊下をダッシュし、三階まで駆け上がると科学室の前の廊下に腰を下ろした。
「はあ、はあ、はあ」
「ぜい、ぜい、ぜい」
早くなった心臓の鼓動を静めようと、深呼吸をする。
「はあはあ、とりあえず逃げられたな」
 信二は息を弾ませたまま喋る。
「今のは危なかった。ああいう挟みうちには気をつけなくちゃな」
早くも呼吸を整えた和哉は、当たりを見回した。
「はあはあはあ、ところで、悠子先輩を早く探さないと」
息も絶え絶えに魅奈が口をきいた。
「そうだ、急がないとあいつは何をしでかすか分からないぞ」
後藤は立ち上がって答えた。
……辛くも危機を回避した信二たちの悠子捜索は続く。
現在、悠子はどこにいるのか?
時刻は間もなく十一時になろうとしていた。