第二章 夜の学校……そして始まり

生徒会室には和哉と一人の女の子がいた。女の子はまた、性懲りもなくお菓子を食べている。
「まったくゴッチーったら酷いんだから、人のチョコを取り上げるなんて」
「怒らないだけマシじゃないか。それに、授業中にお菓子を食べるお前もお前だ。
「えへっ!」
女の子は可愛らしくポーズを取った。彼女の性格は、いたずら好きの子猫を連想させる。
……本多悠子。人見知りしない性格で、明るく元気が取り柄の彼女は、清和西高校でも人気の高い女の子だ。取り分け美人という訳でも、服装が派手という訳でもないが、愛らしい笑顔と仕草は、常に周囲を楽しくさせる。
「でもよ、ゴッチーみたいな教師は他にはなかなかいないぜ」
「うん、そうだね。ゴッチーは面白いよ」
類は友を呼ぶ……とは、よく言ったものである。この二人が同じ学校に通っていて接触しないはずがない。二人は部活、クラスはまったく違うにもかかわらず仲が良い。
「それにしても、悠子まで呼び出されていたのか……本当に悠子は何も知らないんだな?」
「うん、いつも通りに放課後、生徒会室に来たらさあ、机の上にコレがあったんだもん」
悠子はそう言うと、手にした水色の封筒をヒラヒラさせた。
生徒会の副会長を務める悠子は、学校の事で知らない事はない。しかし、今回の事はさすがの悠子も知らない。それどころか生徒会の誰も、会長ですらこの事をまったく知らないとの事だった。
……ガラガラ。
「よう、どうしたこんな所で?」
「あっ、ゴッチー」
入り口のドアを開け、後藤が室内に入って釆た。
「そういう先生こそ、なんか用?」
「おう、和哉。実はな……誰かから俺に呼び出しの手紙が来たんだ」
「呼び出し?」
後藤は、持って来た鞄から例の手紙を取り出した。
「あっ、この封筒……中身も同じだよー」
悠子は白分の封筒を取り出して、後藤のと並べた。
「ふーん、じゃあゴッチーも同じ仲間か」
和哉も封筒を並べる。
後藤は何が何だか分からずに目を丸くする。
「お前たちも同じ封筒を……って事は、他にもまだ何人かいるのかも知れないな」