『10・!』という文字が何を示しているのかは分からなかったが、生徒会室に行けば分かるだろうと、別段気にはしなかった。
「ユリー! ちょっと来て」
廊下から元気に女の子の声が響いた。
「あっ、それじゃあ幸、またね」
廊下へ出て行ったユリを見送った浅岡は、黙って再び本を開いた。

……六時限目の授業が終わり、生徒達は部活に委員会に、そして寄り道等に精を出す。高校生ならではの雰囲気は、ここ清和西高校も一緒だった。秋になり、段々と日の落ちる時間も早くなっている。その為か、大半の生徒達は六時頃には正門を出ていた。
信二は授業が終わると、食堂で和哉と世間話をしていた。和哉と別れて、家に帰ろうと昇降口へ向かった信二は、下足箱を開け、一枚の手紙を取り出す事となった。
「これは・・・まさか」
信二は水色の封筒から丁寧に中身を取り出すと、ゆっくりと文章に目を落とした。

『十三日(金)午後七時、生徒会室でお待ちしています。8・H』

「これは一体……俺にも『招待状』が来た」
信二は時計を見た。
六時半。
指定された時刻まであと三十分ある。
この時、信二は何故か胸騒きがしてならなかった。
今まで賑やかだった校舎内も人気が失せ、不気味な程に静まり返っている。
校舎の廊下の電灯がついた。
……ライトに照らされて、一人佇む信二はこの先に起こる惨劇を知るよしもなかった。