ちなみに、後藤には『ゴッチー』というありがちなニックネームが命名された。後藤はこのような性格、授業の仕方が生徒達に人気で、言うまでもなく西高ナンバーワンの人気教師だ。教師達からは不真面目だという意見もあり、何度も職員会議にはなったが、何事もなく切り抜けて来ている。生徒達と比較的歳の近い二十代前半という事と、この学校出身という事も手伝って、生徒達からの信頼は厚い。現に、『チェリヒス』を知っていた事からも、生徒達との情報のやり取りが活発である事も窺える。
……キーンコーンカーンコーン。
「あっ、授業が終わっちまった。しょうがないな、次回はもっとぺースを上げるからな」
後藤は教材を持つと教室から出て行った。
……黒板にはビッシリと書き込まれた歴史の授業の痕跡が残っていた。
……後藤は手紙の内容には特に疑問を抱かなかった。
今朝、後藤が職員室に八時過ぎに来た時、自分の机の上に水色の封筒が乗っていた。生徒達からの遊びに関する誘いの手紙か、もしくは告白の呼び出しか……今までにも似たような事が何回もあった。今回もそれと同じ事だろうと思っていた後藤は、手紙の最後の『3・O』を見ていなかった。
「おい、浅岡!」
休み時間の教室内に、ドスの効いた男の声が響く。
「何か用?」
「相変わらずスカシてんな、本ばっか読んでっからお前は友達がいないんだぜ」
「あなた、私と友達になりたいの?」
本を静かに閉じると浅岡は冷たい視線を向けた。
「けっ、冗談じゃねえやい。お前なんかと友達になったら、こっちまで辛気臭くなっちまうぜ。その無表情な顔を見てると腹が立って来る」
男は吐き捨てるように言うと、教室を出て行った。
二人のやり取りを見ていた他の生徒達は、再び己の会話に戻った。
「大丈夫、幸?」
一人の女生徒が浅岡の元に駆け寄って来た。
「種田君の言う事なんて気にしちゃだめよ。彼は自業自得なのに、いつまでも恨に持っているんだから」
「……うん、大丈夫」
種田が浅岡を目の敵にしている訳は、半年程前の、体育祭の準備中に起こった事件が原因だった。
……キーンコーンカーンコーン。
「あっ、授業が終わっちまった。しょうがないな、次回はもっとぺースを上げるからな」
後藤は教材を持つと教室から出て行った。
……黒板にはビッシリと書き込まれた歴史の授業の痕跡が残っていた。
……後藤は手紙の内容には特に疑問を抱かなかった。
今朝、後藤が職員室に八時過ぎに来た時、自分の机の上に水色の封筒が乗っていた。生徒達からの遊びに関する誘いの手紙か、もしくは告白の呼び出しか……今までにも似たような事が何回もあった。今回もそれと同じ事だろうと思っていた後藤は、手紙の最後の『3・O』を見ていなかった。
「おい、浅岡!」
休み時間の教室内に、ドスの効いた男の声が響く。
「何か用?」
「相変わらずスカシてんな、本ばっか読んでっからお前は友達がいないんだぜ」
「あなた、私と友達になりたいの?」
本を静かに閉じると浅岡は冷たい視線を向けた。
「けっ、冗談じゃねえやい。お前なんかと友達になったら、こっちまで辛気臭くなっちまうぜ。その無表情な顔を見てると腹が立って来る」
男は吐き捨てるように言うと、教室を出て行った。
二人のやり取りを見ていた他の生徒達は、再び己の会話に戻った。
「大丈夫、幸?」
一人の女生徒が浅岡の元に駆け寄って来た。
「種田君の言う事なんて気にしちゃだめよ。彼は自業自得なのに、いつまでも恨に持っているんだから」
「……うん、大丈夫」
種田が浅岡を目の敵にしている訳は、半年程前の、体育祭の準備中に起こった事件が原因だった。

