……体育館の方から爆発音が聞こえて来た。食堂のガラスがビリビリと振動し、何かの崩れる音や、吹き飛ばされた音が聞こえた。
しかし、今の魅奈にはそんな事はどうでもよかった。
「信二せん……ぱい」
弱々しい声で信二を呼ぶ。
「……魅奈ちゃん、大丈夫だ。俺たちと和哉と冴子。四人で帰ろう」
魅奈は弱弱しく、静かに首を横に振った。
「私……もう、ダメみたいです」
脇腹からの出血は依然として止まらない。
「何を言うんだ! 生きて、生きて帰るんだ家族だ。家族だって待ってるん……」
魅奈は信二の頬に手を当てて言葉を遮った。
「聞いて……下さい」
信二は魅奈の瞳から何か……強い決意のようなものを感じ、黙って聞く事にした。
「私……信二先輩の事」
一瞬、言葉を選ぶかのようにうつむいた後。

「好きです」

信二の目を、魅奈は潤んだ瞳で見つめて言った。
……半ば予想はしていた。魅奈が自分に好意を抱いている事は知っていたし、冴子や和哉からもはやし立てられる事は度々あった。しかし、こんなに可愛く、明るい美少女の魅奈と、平凡な自分とは釣り合わないと決めてかかっていた。今までに告白出来なかったのも、それが理由で仲の良い関係が壊れるのが怖かったからだ。そんな、そんな臆病な自分に、魅奈は想いを打ち明けてくれた。信二は自分の勇気のなさに苛立ち、同時に魅奈からの告白を嬉しく思った。
勿論、信二の答えは決まっていた。
「俺も魅奈ちゃんの事が好きだ」
その言葉で、魅奈の瞳から涙がこぼれ落ちた。
「う、うう、うっうっう」
魅奈は信二の胸に顔を埋め、泣き顔を見られないようにする。そして、そのままの状態で話しだす。
「私、初めて、先輩に……会った時から……」
少し喋るのが辛そうだ。
「わかった、もう、喋らないで」
信二にも、魅奈の痛みが伝わって来るようだった。