ミッドナイト・スクール

「どうしたのー和哉？」
何人かの女子が、席に座ったままの真剣な面持ちの和哉に声をかけてくれたが、今の前かがみ状態の和哉には、ぎこちない返事と、苦笑いを返す事しか出来なかった。

屋上には先客がいた。

長いストレートの髪を翻し、一人の女生徒が振り返った。
「よう信二」
「おっす」
女は服の内ボケッ卜から白い箱とライターを取り出し、箱から細長いタパコを一本取り出して街えた。
「冴子、タバコは体によくないぞ」
「いいんだよ、私はこの一服の為に学校に来てるんだから」
タバコを街えたまま器用に喋ると、冴子と呼ばれた女は手で風除けを作り、ライターで火を点けた。
冴子は、信二遠の隣の２年Ｂ組に在籍している。
……藤田冴子。信二とは高校で知り合い、いつの間にか軽口を叩き合える程の仲になっていた。長いストレートの髪は赤茶色に染めており、ジーンズに白の無地Ｔシャツ、下と揃いの色のジージャンはラフな格好で男みたいだが、Ｔシャツを押し上げている胸の膨らみは、彼女が女であることをしっかりと証明していた。その豊満なバストは、男ならすれ違う際には必ず目がいってしまう。
「よっ、お待た」
和哉が屋上へやって来た。
「よう冴子、どうだ調子は」
「まあまあかな」
和哉は信二の横に腰を下ろし、コンビニの袋から弁当を取り出した。
「おっ、冴子。その靴は秋の新作だな」
「分かるか、さすがに流行には敏感だな」
冴子は服と同じくラフ系の靴を引き寄せて言った。