「この魔法陣を描いて、あの怪物を召喚したのは、紛れも無く人間の仕業だという事よ」
「何?」
ユリの言葉に驚いたのは和哉だけではない。その場にいた全員がユリの方を注目した。
「本当に死神なんていうものが存在していたなら、この魔術書は要らないと思わない? これを見る限りじゃ、誰かがどこからか探して来たこの魔術書を使って、怪物を召喚したとしか思えないわ」
魔術書には、確かにあちらこちらに折り目があり、得体の知れない文字の下には日本語訳がふってあったりした。
「じゃあ、じゃあ、あの死神は人間って事なんですか?」
興奮気味に魅奈が尋ねる。
「それはわからないわ。召喚の際に一緒に呼び出された本物の死神かも知れないし、あるいは体を死神に乗っ取られた、という考え方も出来るわ。ただ、普通の人間でない事だけは確かね」
状況から、ュりは考えられる事を全て挙げていく。
「あの怪物達を追い返す呪文か何かはないのか?」
和哉は魔術書をバラバラとめくり始めた。
「ユリ先輩、この魔法陣を消しちゃうっていうのは?」
「ダメね。そんな事で解決するとは思えないし、ここが唯一の召喚口だとしたら消したらそこで全てが終わりになるかも知れないわ」
魅奈の意見も、どうやら得策ではないようだ。
「じゃあ、一体どうしたらいいんだ?」
「それは私にはわからないわ」
冴子がユリに質問するが、ユリにその答えがわかる筈がなかった。
「ねえ信二君。以前起こった事件では結末はどうなったのか詳しく聞いてない?」
「いや、事件の生存者は一人もいなかったから、何が起きたのかも、どういう結末になったのかもわからないんだ」