「でもさ、海陽に想われてる子って幸せだよね……」



樹里はそう言って、手をそっと離した。



「そうかぁ?」


「そうだよ!だって学校の王子って言われてる人だよ?誰もが認めるイケメンだもん。海陽って……。ねぇ?その子は海陽が好きだって知らないの?」


「さぁ?」


「告っちゃいなよ!向こうも海陽に告られたら嬉しいと思うよ?」


「あぁ……そうだな……」



俺は樹里に笑顔を見せた。



「じゃー……私、帰るね。あっ!前にも言ったけど、たまにはうちに遊びに来てよね!」


「あぁ……」



樹里はベンチに置いた鞄を取った。



「じゃーね!」



笑顔で手を振った樹里は、いつもの樹里に戻っていた。


俺に背を向けて歩き出す樹里の背中を見つめる。


あの人は……水島先生は……俺に告られても嬉しくないよ……。


俺と水島先生は生徒と教師の立場で……。


彼女には付き合ってる人がいるから……。




―海陽Side end―