しばらくの沈黙――。
その沈黙を破ったのは樹里だった。
「海陽はさぁ……何で彼女作らないの?告白されても断ってんでしょ?」
「お前には関係ないだろ?」
俺は空を見上げたまま、そう言った。
「まぁ……そうだけど……。もしかして……好きな人がいるとか?」
「はぁ?」
俺は樹里の顔を見てクスッと笑った。
「その好きな人は……水島先生とか?」
と、笑みを顔に浮かべながら樹里はそう言った。
「何でそう思う?」
「海陽は、いつも音楽室に行ってるって言ってたし……。水島先生は海陽のお母さんに似てるし……。よくわかんないけど……女の勘ってやつ?」
「その勘は不正解だな」
「えっ?」
樹里は俺を見る。
俺はベンチから立ち上がり、樹里の方を向いた。



