夜、和彦が部屋に来た。
夕食を食べながら話しをするけど、私の耳に和彦の話しは全く入って来ない。
上の空で和彦の話しを聞いていた。
私の頭の中にあるのは……奥さんの妊娠……。
そのことばかりが頭の中を駆け巡っている。
「…………英?紗英?」
「…………あ、ん?何?」
私は和彦を見て、慌てて笑顔を作った。
「どうした?今日の紗英、おかしいよ?」
「そう?そんなことないよ」
「そうか?」
「うん……。あっ!新しいワインを買ったの。飲む?」
ダイニングテーブルの椅子から立ち上がって、キッチンに行こうとした。
「紗英?今日は帰るよ。土曜日はいつもそうだろ?」
「あ………そ、そうだったわね」
私はクスッと笑って、椅子に座り直した。