「ゴメンゴメン、手加減したつもりだったんだけど……」
樹里はケラケラ笑いながらそう言った。
「そんなんだから、いつまで経っても彼氏ができねぇんだよ!」
俺は叩かれたとこを手で押さえながら言った。
まだジンジンしてる。
「失礼ねー!これでも言い寄って来る男はいるんだからね!」
「はいはい」
「ねぇ?さっき1年の子がここから出て来るの見たけど?しかも泣きながら。また告白されたの?これで何回目?」
「さぁ……」
「今は王子って、あだ名でモテまくってるけど、あの泣き虫で女の子みたいなナヨナヨしてた海陽がねぇ……王子だって。考えられない」
樹里がこっちを見てクスクス笑う。
「う、うっせー!昔の話しをするな!」
「だってホントのことじゃん」
泣き虫で女みたいに弱々しかった俺。
男みたいにサバサバしてた樹里。
イジメられて泣いてると、いつも樹里が助けてくれた。
誰にも知られたくない幼い頃の俺。
俺の過去……知られたくないことを知ってるのは樹里だけだった。