俺は走り去って行く彼女の背中を見つめていた。
ゴメン……嘘ついて……。
本当は……俺の好きな人はキミも知ってる人なんだ……。
俺は体育館裏から見える校舎の4階に視線を移した。
俺の目に映る音楽室の窓……。
俺の好きな人がいるとこ。
水島先生――。
俺の好きな人……。
あの日……始業式で初めて見た時、先生から目が離せなかった……。
クリッとした吸い込まれそうな大きな瞳。
白い肌。
緊張した面持ちで体育館の舞台で挨拶する先生……。
写真で見た若い時の母親に、どことなく似ていた。
胸がドキドキして……。
一目惚れ――。
俺は先生に一目惚れした……。



