「てか、さっき言ってた山田太郎ものがたりって何だ?」
「あぁ、山田太郎ものがたり?妹が読んでた漫画なんだけどな……」
そう言って、フォークで突き刺したタコさんウインナーを口に入れた。
「山田太郎っていう高校生が主人公で、容姿端麗、学力優秀、運動神経抜群の完璧人間なんだよ。
でな、家がすっげー貧乏なんだけど、特待生で金持ちばかりが行く私立の名門高校に通ってんだよ。
気品あふれているその姿から、周りからは裕福だと勘違いされてて、王子様系の容姿と優しい性格からすっげーモテるんだけど、本人には自覚がないっていう話。なっ?お前みたいだろ?」
「そうか?」
「あぁ、初めて読んだ時に、海陽みてぇって思ったし。まぁ、でもお前は山田太郎と違って、モテてる自覚はあるけどな」
晶斗がクスッと笑う。
確かに俺は自分でモテているという自覚はある。
毎日、違う女子が弁当を作って来てくれて、王子と周りから呼ばれて、中学の時から数え切れないくらい告白をされた。
今まで付き合った女の子も何人もいる。
それで自覚がなかったらよっぽど鈍感なヤツか天然か……。



