音楽室の窓から入ってくる春風にカーテンが揺れている。
端から窓を閉めていく。
中庭側の窓が閉め終わったら、次は校門側の窓を閉めていく。
校庭に咲いた満開の桜が見える。
風が吹くたび、桜の花びらが舞い散る。
ふと校門を見ると、部活帰りの生徒に混じって星野くんの姿が見えた。
校門を出る星野くんの後ろから、女子生徒が走って来て、星野くんの腕に自分の腕を絡める。
女子生徒は嬉しそうに笑いながら、星野くんと校門を出て行った。
彼女いないって……いるじゃん。
さっきの悲しそうに見えた顔はやっぱり気のせいだったんだ。
窓を閉め終え、音楽室側の準備室のドアの鍵をかけた。
鞄を持って、何気なく手を入れたジャケットのポケット。
何かが手に当たった。
それを取り出すと、星野くんからもらったサイダー味のキャンディーが手の中にあった。
フィルムをゆっくり剥いで、キャンディーを口の中に入れた。
口の中で広がる甘酸っぱいキャンディー。
私は音楽室の電気を消して、音楽室を後にした。