「俺は、アイツには愛はないんだ……」
そう、遠くを見て言う和彦。
そして目線を私に移して、
「愛してるのは紗英だけ」
と、言った。
「和彦……」
「いつになるかわからないけど、待っててくれないか?」
「うん……待ってる……」
「必ず別れるから……そしたら結婚しよ?」
「うん……でも……」
「でも?何?」
でも……もし……。
「奥さんが妊娠したら?」
「不安?」
私は"コクン"と頷いた。
だって和彦と奥さんは夫婦だもん。
私より一緒にいる時間が長い。
だからそういう可能性だってあるでしょ?
「大丈夫だよ。愛がないって言ったろ?アイツとはセックスレスだから……」
「そうなの?」
「あぁ、だから待ってて欲しい……」
「うん」
私は和彦に抱きついた。
さっきの複雑だった心境はいつの間にか消えていた。
待ってるよ。
和彦のこと信じてる……。