「俺が、ピアニストになる夢を叶えたら会って欲しいって言ったでしょ?あの時、紗英さんは笑顔を見せてくれた。俺はそれを"Yes"だと思ったから……夢を叶えたら会ってくれる。そう約束したんだって信じてたから……。だから頑張れたんだ……」


「海陽……」



私の目から涙がこぼれ落ちた。



「紗英さん?何で泣くの?」


「ゴメン……なさい……」



海陽の指が頬に触れた。



「私はあの時、"Yes"も"No"も言えなかった……。ただ、笑顔を見せることしか出来なかったの……。自分でも答えがわからなかったから……。私はズルイね……。海陽は"Yes"と信じてくれて頑張ったのに……」


「あの時、答えがわからなかったとしても、こうして再会出来たんだからいいんじゃないかな?」


「海陽……」


「俺は紗英さんがテレビを見て会いに来てくれると信じてたよ。だからあの並木道に行ったんだ……」



私は海陽の胸に顔を埋めた。


私を包み込むように、優しく抱きしめる海陽。


海陽の胸の鼓動が規則正しく聞こえる。


海陽の温もりが、胸の鼓動が心地良い。


私は海陽の胸に顔を埋めたまま、ゆっくり目を閉じた……。