「初出勤はどうだった?」
ワインを一口飲んだ和彦が聞いてきた。
「疲れたってより緊張したかな……」
「そっか。まぁ、誰でも最初はそんなもんだよ。でもそのうち慣れるよ」
「そうだね」
「あぁ……」
和彦はそう言うと、パスタをスプーンとフォークで救い上げた。
「そうそう、今日ね、凄くピアノの上手い生徒に会ったの」
「へぇ……」
和彦はスプーンとフォークで救い上げたパスタを口に運んだ。
「楽譜も無しにピアノを弾いてて、習ってるの?って聞いたら独学って言ってた」
その時、私の頭の中に音楽室で会った彼、星野くんの笑顔が浮かんだ。



