「携帯を出して下さい」
校長に言われて、私と海陽は携帯を出した。
「もしお互いの連絡先を携帯に登録してるなら、ここで私たちの目の前で削除して下さい」
「わかりました……」
私はそう呟くと、携帯のメモリに入っている海陽のアドレスと番号を削除した。
削除する時に手が震えた。
「処分が決まるまで自宅待機してて下さい。今日はもう早退して頂いて結構です」
「あの!」
私は自分の机に戻る校長の背中に向かって叫んだ。
「何でしょう?」
「星野くんは何も悪くないんです。悪いのは全て私なんです。うちのピアノを使うことを言ったのも私なんです。だから……だから処分は私だけにして下さい。お願いします!」
「先生……」
海陽が私を見る。
私は校長の背中に向かって頭を下げた。
校長はこちらを見ようとしない。
「お願いします……」
もう限界だった。
目に溜まった涙は床にポタポタと落ちていった。
「処分が決まったら連絡するとしか言えません……。もう下がりなさい……」
校長はこちらを見ることなく窓の外を見たままそう言った。