私が仕事から帰ると、海陽が部屋に来ていた。
「おかえり」
「ただいま。海陽、どうしたの?今日は金曜日じゃないよ?」
私は鞄をソファーに置きながらそう言った。
「来たらダメだった?」
「そんなことないよ。晩ご飯、食べた?」
海陽が首を左右に振った。
「たいしたもの作れないけど、何か作るね」
私がキッチンに行こうとしたら、海陽に腕を掴まれた。
「海陽?」
掴まれた腕をそのまま引っ張られ、ソファーに座っていた海陽の胸に飛び込んだ。
「海陽?どうしたの?」
顔を上げて海陽を見る。
「紗英さんを抱きしめたかったから……」
そう言った海陽の目は、なぜか悲しそうで……切なそうで……。
海陽?
何でそんな目をするの?



