「紗英さん?」


「ん?」


「俺さ……高校生で……バイトもしてなくて、今の生活は母さんが遺してくれたもので生活してて……」


「うん」



遺してくれたものって……生命保険とか印税とかかな?



「だからね……その……レッスン料なんだけど……そんなに高い金額は払えないかもしれない……」


「レッスン料はいらないわ」


「えっ?いいの?」


「うん。いらない」


「ありがとう!」



テーブルの上に置いた私の手を海陽は握ってきた。


その手を左右にブンブン振った。