「何で?」
「母さんと俺の夢をもう1度、頑張ってみようと思って……」
「お母様と海陽の夢?それって……ピアニスト?」
「あぁ。だから、紗英さんにピアノを教えて欲しいんだ……」
ピアニストを再び目指す海陽に私なんかがピアノを教えていいの?
「私なんかじゃなくて、有名な先生に付いた方がいいんじゃないかな……」
「俺は紗英さんに教えてもらいたいの。ダメ?」
うぅっ……。
上目遣いで見てるし……。
「…………わかった。海陽には負けたわ」
だって、捨てられた仔犬みたいに可愛い顔で、しかも上目遣いで見るんだもん。
「ホント?」
「うん」
「ありがとう!紗英さん」
笑顔の海陽。
引き受けたもののホントに私でいいのかなぁ……。
でも、海陽の夢のためだ。
頑張るしかないよね。