"パチパチ――"
弾き終わった後、拍手が聞こえた。
海陽を見ると、笑顔で拍手をしていた。
「紗英さん、弾けるじゃん」
海陽はそう言って、椅子に座っている私の体を後ろから抱きしめてきた。
「まぁ、一応……音大出てるからね……」
「上手だったよ。紗英さんのピアノを弾いてる時の顔、すっげーヤバかったよ……」
海陽はそう言って、私の首筋に顔を埋めてきた。
背中がゾクゾクとする。
「いやっ……海陽!?くすぐったいよ」
私がそう言っても離れてくれない。
海陽は私の首筋から顔を上げて、頬を寄せ合うようにすると、私を後ろから抱きしめたまま手を伸ばし、パッヘルベルのカノンを弾き始めた。