「やっぱり海陽はピアノが上手いな……」
弾き終わった時、私は海陽にそう言った。
「そんなことないよ」
クスッと笑う海陽。
どこが!
海陽は自分でピアノが上手いことがわかってないだけだよ。
凄く上手いんだから……。
「紗英さん、どうぞ?」
「い、いい!」
私は首をブンブン左右に振った。
「どうして?練習しないと……」
海陽の後に弾くなんて……絶対やだ!
「紗英さんのピアノ聴きたいな……」
「やだ!絶対にやだ!海陽に比べたら私なんて……」
「そんな子供みたいなこと言わないの」
海陽は私の腕を掴んで無理矢理、椅子に座らせた。
「早く弾いて?」
うぅ……。
隣には海陽が立ってる。
めっちゃ見てる……。
凄く緊張してきたよ……。
私は"はぁ……"と溜め息をついて、緊張した面持ちで鍵盤に手を置いた。



