「紗英さん……俺も弾いてみたいんだけど……いい?」 ピアノの椅子に座ろうとしたら海陽がそう言ってきた。 「いいよ。どうぞ?」 椅子から避ける。 「ありがとう」 海陽はソファーから立ち上がると、ピアノのとこまで来て椅子に座った。 "ふぅ"と息を吐くと、海陽がピアノを弾きはじめる。 ほとんど楽譜を見ない海陽。 やっぱり海陽のピアノは凄い。 海陽のピアノを聴いてると、体中がゾワゾワと震える。 音大を出た音楽教師の私が生徒である海陽にピアノは負けている気がする……。