「紗英さん……」
「キャッ!」
晩ご飯を作ってると、海陽に後ろから抱きつかれた。
「海陽が来たの全然、気付かなかった」
私は海陽の腕の中をクルッと回ってそう言った。
「玄関の鍵、閉めてないんだもん。不用心だよ」
「海陽が来るから開けてたの」
「俺にはこれがあるから大丈夫だよ」
海陽は私の目の前でスペアキーをブラブラさせた。
「これからはちゃんと閉めなきゃダメだよ」
「はいはい」
私はクスクス笑いながら返事をした。
「何で笑うの?」
「だって……海陽って、私より年下なのに私よりしっかりしてるなぁって……」
「紗英さんが子供過ぎるんだよ」
海陽はクスッと笑ってそう言った。
「いい匂い。晩ご飯作ってくれてたんだ」
「うん。もうすぐ出来るから、海陽はゆっくりしてて?」
「あぁ。紗英さんの手料理、楽しみ」
海陽は私から離れて、リビングへ行った。



