マンションの最寄りの駅に着いた。
電車を降りると、制服姿の学生はいなくて、会社帰りのサラリーマンやOLが目立っていた。
「うちの学校のヤツがいなくて良かったね」
改札まで歩いてた時に海陽がそう言ってきた。
もちろん今は手を繋いでいない。
「そうだね」
でも、もし生徒がいたとして、私達のことを見られてたとしても駅で偶然会ったと嘘をつくことは出来るけどね。
「紗英さん、俺、コインロッカーに荷物預けてるんだ。だからここで……。あと、これ……ありがとう……」
改札を抜けた時、海陽は笑顔でそう言った。
海陽の手には私の部屋のスペアキーがあった。
「それ、あげる」
「いいの?」
「うん」
「ありがとう」
笑顔の私。
でも……ここで海陽と別れると思ったら急に寂しさが込み上げてきた。
海陽と離れたくない……。