「紗英さん、おかえり」 ピアノを弾くのを止めた海陽がニコッと微笑んでそう言った。 「ただいま。帰ってなかったの?」 「うん。昨日、樹里がくれた食材で晩ご飯、作ったんだ。キッチンを勝手に使ってゴメンね」 「ううん」 私は首を左右に振った。 「一緒に食べよ?」 「うん」 海陽がピアノの椅子から立ち上がり傍に来て、ギュッと抱きしめた。 そして唇に軽くキスを落とす。 それだけで恥ずかしくて、顔が熱くなっていくのがわかった。