先生が住むマンション。


エントランスを入ると、1人の男が壁にもたれ掛かっていた。


あれ?


あの男……確か……。


男が顔を上げてこっちを見る。


やっぱり……アイツだ……。


今日、カフェで会った、先生の元不倫相手。


男がこっちに歩いて来る。



「こんなとこで何してるんですか?」



俺はそう言って、男の顔を睨んだ。



「何って……紗英に会いに来ただけだけど?」



男は笑顔でそう言った。


何だ?この笑顔は……。



「会いに来た?」


「そう。紗英が寂しいって言うから……。久しぶりに慰めてやったよ」


「えっ?」



久しぶりに慰めてやった?


それって……。



「紗英、喜んでたよ」



男は俺の肩をポンポンと叩くと、マンションから出て行った。


嘘だろ……。


何で……何で……。


先生はそれで俺に電話してきたのか?


俺はてっきり樹里が……。


樹里は関係なかったのか?


先生はまだアイツのことが好きなのか?




―海陽Side end―